― 特別寄稿 ―
世界に一つだけの夢を咲かせるための志望校選び
<樟蔭高等学校教頭 佐藤 重勝 先生>
以前、「青いバラ」の誕生が話題を呼びました。飲料水メーカーの社長さんが、ウイスキー作りでお世話になったイギリスのスコットランド(シンボルカラーが青)に恩返しするため、イギリスの国花バラに青色が無いので「青色のバラ」を開発することを約束されたそうです。不可能とも言われていましたが、十四年の歳月をかけ開発に成功したという報道でした。
さて、受験生が志望校を選ぶということは、夢を持ちそれを実現するための第一歩を踏み出すということです。たとえそれがささやかな夢であっても、その夢に向けてスタートを切ることです。今ははっきりした夢が無くても将来につながる夢が生まれるきっかけをつくることです。花(夢)を咲かせるには、同じような場所や土で、同じように肥料や水を与えても一つとして同じ花が咲くのではありません。それぞれが一つひとつ違う種を持っている特別な花なのです。それでは、皆さんの特別な一つだけの夢(花)を咲かせるための志望校選びのポイントや注意点を挙げていきます。
公立・私立の各高校では様々な進路や希望に対応するため多様化し、特色ある学校づくりを行っています。特に、私立高校では共学校以外に女子校や男子校があり、建学の精神を教育の中心にし個性ある独自の学校教育を行っています。様々な学科やコースが設置され特色ある教育課程が編成され、高校生活でそれぞれの夢の実現が可能になるように努めています。
志望校選びは、まず「入試説明会、受験情報誌・新聞・インターネット等で調べる」「中学校・塾の進路指導で詳細な情報を得る」「知り合いの卒業生や先輩から具体的な情報を聞く」等で情報を得ることです。その上で、志望校選びのポイントとして「学校の特色あるコース・教育課程の内容」「希望進路に適したコース」「学習指導のきめ細かさ」「進路指導と進学実績」「自分の成績」「生活指導の特徴」「クラブ活動の状況」「卒業後の将来像」等が挙げられます。
どの学校を選んでよいかわからない人は身近な小さな夢をもとに考えてください。青いバラの誕生に限らずどのような夢も一人一人の、一日一日の身近な小さな夢の実現から出発し大きな夢の実現となるのです。志望校が何校かにしぼることができたら、再度学校案内や資料をよく読んでコースや教育課程等わからない事はチェックしておきましょう。
また、入試説明会・オープンスクール・体験入学の日程を知り、親子で一度は学校訪問し教育環境、交通アクセス、施設整備、先生方の熱意や指導、生徒の活動や生活態度等を表面的なことだけにとらわれないようにしてみることです。学校案内に載っていない事まで遠慮なく質問し聞いて下さい。事前に聞く内容をメモしておきましょう。現在の成績と合格の可能性や入学試験の傾向や対策も相談するとよいでしょう。
志望校選びの注意点は、親子でよく相談し、かたくなで独りよがりの判断にならないように、先生・家族・先輩・卒業生の意見を良く聞き志望校を選ぶことです。判断を間違えば出会う人生の可能性を狭めてしまいます。
自主的に学校生活に取り組んで学習し、夢が実現するような志望校選びをすることで、豊かな感性が磨かれ人間的な成長が育成され、個性が伸ばされる充実した三年間を送ることができます。
入学試験は十分な準備をすれば合格は間違いないでしょう。あまり勉強が進んでいない人も今からでも頑張れば十分間に合います。オリンピックで華々しく活躍した選手達も、夢を思い描いて毎日毎日の単調な練習の繰り返しの結果として栄冠を勝ち取りました。一日一日の学習を積み上げていけば合格を得られることでしょう。
特別な一つだけの夢を咲かせるための志望校選びの指針になったでしょうか。Only Oneの夢の実現を目指す受験生のご健闘を祈ります。
彼を知り、己を知れば
<阪南大学高等学校教頭 池田 憲昭 先生>
中学三年生の皆さん、いよいよあなたがたの番ですね。でも、「まだ実感がわかない」「親や先生が何とかしてくれるだろう」と思っている人も、たくさんいるのではありませんか。たとえ実感がわかなくても、入試は待ったなしにやってきます。また人の勧めるままに決めた学校が自分に合わなくて後悔したり、時には途中で挫折してしまったりという例が結構あるということも知っておいてください。やはりここは、自分で「何とかしよう」と考えましょう。この姿勢こそが、よりよい学校選びと、すばらしい高校生活を手にするための秘訣です。
さて、その上でのお話ですが、孫子の兵法に「彼を知り己を知れば百戦あやうからず」というのがあります。「敵と味方の情勢をよく知って、長短優劣を考えて戦えば、何度戦っても負けることはない」というくらいの意味です。皆さんにとって、高校入試は未来を切り開く重要な戦いですから、ここはひとつ、この言葉を使って話を進めてみましょう。
皆さんにとっての「彼」とは進むべき高校のことですが、誤解していけないのは、単にその高校の学力レベルのことだけではないということです。もちろんレベルを知らなければ話にならないのは言うまでもありませんが、学力レベルや名前だけで高校を選ぶというのは、敵の情勢のほんの一部しか知らずに戦うことにほかなりません。「生兵法は大けがのもと」ですね。最近は公立高校でもそれぞれ特徴を持ったところが多くなりました。まして私立は多種多様です。たとえば極端な話、同じ高校でもコース(科)が違えば学校が違うと感じられることだってあるのです。もうそろそろ皆さんの頭にはいくつかの高校の名前が浮かんでいると思いますが、あなたはその学校の教育方針を知っていますか。その学校のどんなコース(科)を目指すのですか。そのコース(科)の目標はわかっていますか。週何日制ですか。授業は何時間目まであるのでしょう。三年間でどんな科目を学びますか。クラブや設備、規則はどうなっているのでしょう。
どうですか皆さん、これらのことを知らずに学校を選ぶなんて考えられないでしょう。でも実際は「そのうち何とかなるだろう」と思っているうちに、結局学力レベルだけで学校選びをする羽目になる人が多いのですよ。幸い今の時代は、「オープンキャンパス」などといって、見学会や説明会を開催する学校が、公私を問わず多くなりました。パンフレットやホームページ、受験専門紙(誌)などを参考に、目標を絞り込んで、必ず実際に足を運んでみましょう。そうすれば、より詳しい情報や雰囲気に接するとともに、通学の手段や時間も体験できるでしょう。それこそが「彼を知る」ことなのです。
では「己を知る」とはどういうことでしょう。これもまた自分の学力だけではありません。性格や趣味、将来の目標などを含めて、自分をしっかり見つめるということですね。すべての皆さんに十年後の自分を思い描けとまでは言いません。でもせめて高校三年間に自分のやりたいこと、やらねばならぬことだけははっきり決めておきましょう。「大学へ行くために勉強したい」でも「クラブ活動を思い切りやりたい」でもいいですから、自分自身で考えましょう。そこをしっかり定めてこそ、目標を絞ることも、先生や親のアドバイスを生かすこともできるのです。受験生の皆さん、人に頼らず、自分に甘えず、「彼」と「己」をよく知って、この戦いを勝ち抜いてください。最後にもう一言添えるなら、自分が努力した結果に自信と誇りを持って、あなたの選んだ高校生活を過ごしてほしいと願っています。
「チャレンジできることに感謝して!」
<奈良女子高等学校教頭 片岡浩明 先生>
受験生の皆さん、義務教育終了まで残り僅かですね、あと三カ月余りで入試に突入です。直接皆さんに関わる来年度入試から、各府県で公立高校の再編成や学区変更に伴う入試システム変更などが実施されますので、今までの資料をそのまま当てはめられないケースがあるかも知れません。以前のように、大半の高校が一本調子の縦並びであった時代から、着実に個性尊重の時代に移り変わろうとしているのです。
そこで高校選定に関し、今の自分の考えはどうなのか?大まかに次のA〜Cの三つのパターンを述べますので、自分はどれに当てはまるかを考えてみて下さい。
A:絶対に公立
B:行きたい私学がある
C:まだはっきり決めていない
Aタイプの人は自分の内申点を正確に把握し、どこの公立高校ならほぼ合格間違いないかを調べる。今は公立も受験機会が増え、科・コースにこだわりがなければ複数回挑戦できるケースがほとんどなので、中学や学習塾の先生にその意志を伝え相談する。私立の併願については考える必要がないよう、内申・実力の充実に努めましょう。
Bタイプの人は実力(偏差値)が判定材料になる場合がほとんどです。しかも私学の場合は府県を越えて広い範囲から受験生が挑戦してきます。そのため地域の実力テストだけでは判定し難いこともあるので、大阪進研などの母数の大きな業者テストを受験して、より正確な判定材料を出しておきましょう。
また、自分の希望する私学に実力が及ばない場合は、中学や学習塾の先生に相談して下さい。希望する私学に似た特徴を持つ高校をリストアップしてもらい、それらの学校説明会や体験入学などにも参加して自分の希望に合った学校かどうかを積極的に質問し、自分自身でも確認できる姿勢を身につけましょう。
Cタイプの人。あまり時間は残っていません。今一度、自分は何がしたいか・どんな高校生活を送りたいか?を真剣に考え、先生に相談して学校案内を見たり説明会に出向くなど、後悔することのないよう早く的を絞りましょう。
いずれのタイプにせよ入試まで残り三カ月余り、今から実力が大化けすることはほとんどありません。しかしワンステップ上の実力を身につけて希望を確実なものにすることは充分可能です。そこで次に、そのためのごく一般的な取り組み方について話します。
@今から毎日、自宅での勉強時間を三十分〜一時間増やす。
A勉強に取りかかったら、最低でも一時間はやろうとしていることに集中して途中で立ち歩いたりすることなく、食べ物・飲み物も口にしない。
B解答規定時間の定められている問題に取り組む場合、途中で解かりにくく、時間のかかりそうな問題に遭遇した時は、その場で解答・解説を見て流れを止めてはいけません。その問いを後回しにして次の問題に進み、最終問題まで解いた後、余った時間で途中とばした問いに取りかかる。そして時間がきたらその場で丸打ちをし、分からなかった問題・間違えた問題については解説をしっかり読んで、答えられなかった問題や誤答の原因を究明する。それでも理解できない問題は先生に質問し、絶対に放置しておかない。
どうでしょう?以上@〜Bを今日から始めてみて下さい。皆さんが受験する頃にはかなりの自信が身に付きますし、これらの姿勢は受験勉強に限らず、高校に入学してからも役立ちます。@は日々継続して物事に取り組む姿勢を培い、Aは集中力を養う。Bではテストの受け方・弱点補強につながります。
今までに経験した人もおられると思いますが「途中の問題で時間を費やしすぎて、時間切れになってしまった…」というような失敗をしないために、また間違えやすい問題・苦手な問題を解消するためにも役立ちます。是非やってみて下さい。
いろいろ述べましたが、最後に一言!「受験はこれから続く長い人生の第一関門です。たとえ失敗してもやり直しはききますが、今こうして受験に取り組ませていただけることに感謝して、精一杯チャレンジして下さい。」中三生諸君、健闘を祈ります!
「学校選びと自分探し」
<京都橘高等学校教頭 稲吉陽作 先生>
京都府内には全部で四十の私立高校があります。共学校と男女別学校、宗教のある学校とない学校、歴史の古い学校と新しい学校、実に千差万別で、そこにこそ私学の魅力があります。
ではちょっと頭のトレーニング。各校の、沿革・建学の精神・教育目標の中からキー・ワードをひろってみました。どの高校のことか想像しながら、まずは目を通してください。
「三宝帰依」「誠実・勤労・忍耐・温和」「カトリック精神に基づく人格教育」「感恩先苦」「座禅と少林寺拳法」「不撓不屈」「法然上人の人格と教え」「従順と純潔」「神が造られた人間の本来の姿」「弘法大師と綜藝種智院」「和顔愛語」「宗教的情操と徳性」「知性・自律・礼儀」「管理教育や受験偏重教育をしない」「親鸞上人と真実心」「自由と清新、平和と民主主義」「風とゆききし雲からエネルギーをとれ」「地の塩、世の光となる女性」「報恩感謝」「神から与えられた可能性を開花させる」「京都府内初の単位制高校」「自立共栄」「知性を広げ神を知らせる」「真善美」「真宗の精神に基づいた人間教育」「真・善・美」「心を育てる人間教育」「自尊・自知・自制」「国際感覚と日本文化を理解する心」「新島襄の目指したキリスト教主義」「禅の精神」「いのちの尊さと生きることの意義」「確かな学力と豊かな人間性」「日本と外国の文化への広い理解」「自立・共生」「全員クラブ必修」「誠と熱」「明智をもって明徳を実戦する」「帰国生と一般生徒がともに学ぶ」「新しい世紀に力強く生きる有為な人材」
いかがでしたか。学校名をあてることのできた言葉がいくつあったでしょうか。もちろん、この短い言葉だけで学校を想像するのは難しいでしょう。学校を知るには何と言っても実際に足を運ぶことが一番ですが、その前に各校の学校案内を熟読しましょう。その際にチェックすべきポイントをあげてみます。
@教育理念・理想
「建学の精神」「教育目標」「教育方針」などの言葉で表されているのがこれです。世界と日本の現実をどう見ているのか、人間とは何か、人生の究極目標は何かなどの根本問題について、学校が受験生に向けて発しているメッセージを読みとりましょう。ある学校は宗教の信念に基づいてそれを述べるでしょう。別の学校は理想に燃えて学校をつくった創立者の言葉を借りるでしょう。校長先生の強烈な個性がそこに表れている場合もあるかもしれません。多分に抽象的で高度な内容を含みますが、ていねいに読みとりましょう。
Aカリキュラム
理念や教育目標を実現するための教育計画全体をカリキュラムといいます。どんな授業がどれくらいあるのか、土曜日の活用のしかた、学校行事、クラブなど、他校とのちがいに着目して調べましょう。
B在校生・卒業生の言葉
学校案内に登場する以上、悪いことを書かないのは当然としても、経験者のナマの言葉には説得力があります。教育とは結局のところ、人と人との関わりの中で行われる営みですから、その生徒がその学校のどんなところに感銘を受けたのかを読むことは大いに参考になります。
以上、学校選びのポイントを三つだけ上げました。自分に合った学校を選ぶということは、自分がどんな人間なのか、どんな人間になりたいかを探すことに他なりません。これから始まる「自分探し」の第一歩というつもりで、真剣に取り組んでください。